SAMMU MAGAZINE 2023 Vol.3
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『秋月』の菜の花「秋月」のお店に入ると、「練り切り」に目がいく。季節の移ろいを表現した様々な風物詩を、職人の技巧で形作る「練り切り」。繊細で彩り豊かなその美しさは、まさに和菓子の芸術品だ。うっとりと眺めてしまう。ここは、成東で50年続く老舗和菓子店「秋月」だ。二代目重俊さんに、「練り切り」を作るところを見せてもらえないかお願いした。一昨年、シックな趣あるお店に改装された「秋月」。作業場だけは当時のまま残された。凛とした空気が張り詰める中、道具が並ぶ作業台に、白あんと色の付いたあんが用意された。作業台の前に立つ重俊さんの表情が引き締まる。手の平にあんを乗せ、練りはじめる。巧みな指先の動き、極めた道具の熟し、技術と伝統、そして感性とが相まって、美しく愛らしい「練り切り」が作られていく。その所作にひとつの迷いもなく、全てが手の中で流れるようにすすめられていくのだ。鍛練された技ひとつひとつもまた美しい。寒牡丹、福梅、水仙、ふくら雀、侂助と、次々に形作られ、「房総では1月には咲いていますからね。〝菜の花〟は、新春を彩るモチーフのひとつです」と、色鮮やかな「菜の花」が出来上がった。この辺りで春の訪れを感じるのは、菜の花だ。寒中に咲く菜の花を見ると、そこまで春は来ているんだと、わくわくと嬉しい気持ちになる。あの眩いばかりの黄色い花と若々しい新緑が、見事に和菓子で表現された。25創業創業50年年13秋月千葉県山武市津辺218 TEL:0475-82-2317営業時間:10:00〜17:00 定休日:木曜日練り切り/各200円(税込)

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